法律の解釈について

歯科衛生士による局所麻酔の法的根拠と解釈

歯科衛生士(以下、衛生士という。)による浸潤麻酔(局所麻酔。以下、麻酔という。)の実施は、一定の条件のもとで法的に認められた相対的歯科医療行為です。
このページでは、その根拠となる法律・省令・通知の内容を時系列で整理し、正確な情報・解釈をご説明します。

1|歯科衛生士の業務(昭和23年)

歯科衛生士法(昭和23年法律第204号)第2条第2項は、歯科衛生士の業務として「歯科診療の補助」を規定しています。

歯科衛生士は、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第31条第1項及び第32条の規定にかかわらず、歯科診療の補助をなすことを業とすることができる。

浸潤麻酔行為はこの「歯科診療の補助」の範囲に含まれる行為として、以降の行政見解・通知においてその解釈が積み重ねられてきました。

2|厚生省医務課長回答(昭和40年)

昭和40年7月1日付け医事第48号「麻酔行為について」(厚生省医務課長回答)において、以下の見解が示されました。

麻酔行為は医行為であり、医師・歯科医師・看護婦・准看護婦または歯科衛生士でない者が、医師または歯科医師の指示の下に業として麻酔行為の全課程に従事することは、各関連法に違反するものと解される——すなわち、歯科衛生士は歯科医師の指示のもとであれば、医業として麻酔行為の全課程に従事できるという行政の考え方が初めて明示されました。

3|歯科衛生士の業務範囲に関する厚生労働省による調査報告(昭和61年)

昭和61年に行われた「歯科衛生士の業務範囲についての調査報告」においても、歯科衛生士が麻酔を行える根拠の一つとして参照されています。この調査は、歯科衛生士が担いうる診療補助の範囲を整理したものであり、業務拡大の議論の礎となりました。

4|厚生労働省による研修プログラムの策定(令和7年)

令和7年6月20日、厚生労働省医政局長通知(医政発0620第8号)により、「歯科衛生士による浸潤麻酔の実施に向けた研修プログラム(例)令和7年度版」が公表されました。

本通知は、歯科衛生士が浸潤麻酔行為を安全に実施するために必要な知識・技術を習得するための研修内容を体系的に示したものであり、昭和40年以来の行政見解を踏まえ、現代の歯科医療における実態に対応したものです。

歯科衛生士が浸潤麻酔行為を実施する場合の主な前提条件として、以下が明示されています。

① 歯科医師による個別の指示が必要であること 歯科衛生士が自らの判断で当該行為を実施することはできません。
② 歯科医師による実施可否の個別判断が必要であること 患者の状態および歯科衛生士の知識・技能等を踏まえ、歯科医師が実施の可否を個々に判断する必要があります。

 

5|BLS受講証の認証とIDMAのサポート体制

厚生労働省の研修プログラム(例)では、一次救命処置(BLS)講習の受講が構成要件の一つとして示されており、AHA(アメリカ心臓協会)のBLSコース受講証などが認証対象の例として挙げられています。

IDMAでは、歯科医療現場における安全管理の観点から、局所麻酔の習得とあわせて救急対応の理解が不可欠であると考えています。 そのため本講習では、厚生労働省の示す考え方に準拠し、BLS・AEDなどの救急対応の基本を含めた蘇生教育を実施しています。これにより、臨床現場において万が一の事態が生じた際にも適切に対応できる知識と判断力を身につけることを目的としています。

また、救急蘇生教育には国際的な教育基準が存在することから、IDMAではそれらの教育体系についても継続的に情報収集を行い、必要に応じて関連団体との連携も視野に入れながら、受講者が段階的に学びを深めていける教育環境の整備を進めています。

IDMAは、歯科医療の現場における安全性向上を目的として、麻酔教育と救急蘇生教育の両面から受講者を支えるサポート体制の構築に取り組んでいます。

NPO法人日本ACLS協会について

注記:
本ページの記載は、歯科衛生士法(昭和23年法律第204号)、厚生省医務課長回答(昭和40年7月1日付け医事第48号)、および厚生労働省通知(医政発0620第8号、令和7年6月20日)の内容に基づくものです。法令の改正・通知の改訂により内容が変更される場合があります。最新情報については厚生労働省の公式発表をご確認ください。